nubird / peperonia’s blog

月のテレポーテーションに小指を引っかける人の物語

理解の助け

おおよそ、理解の助けになるものは「経験」だと僕は思っています

無心でいる自分に、外部から「経験」をもたらされて

初めて、分かることがあります。

 

高校の頃、ちょうど帰り道でした

時間は夜9時を回っていたことでしょう

辺りはもう暗く、街灯が道を照らしているに過ぎません

 

バイクが横付けして「乗れや」って

言われました。見知った顔でした。

 

原付であることを確認した上で、逡巡……

「ヘルメットは?」念のために聞きました。見知った顔はノーヘルです。

「ない」

 

正確な言葉は忘れましたが、ともかく「ない」ことは伝わりました。

 

またもや逡巡……

ともかく乗ることにしました。

 

その頃、僕は自身が人間としてはおよそ不適格な存在だと思っていました。

この世界で生きていくには、経験が必要だと思っていた頃です。

 

きっと、ここで「乗る」ことには

何かの意味があり、何かの"発見"に繋がると期待して、乗ることにしました。

 

ここでは「乗る」ことで、警察に捕まって補導の年齢域は過ぎていたので

逮捕される、というリスクがありました。

(もっともソイツは運転上手いし見つかっても逃げきる自信があったとは思いますが)

 

で、とにかく「乗る」ことにしました。

 

東に向かっていました。信号の差し掛かったところで、赤信号でした。

「信号はどうするんだ」

「無視する」

 

質問には明確に答えてくれました。「そりゃそうか」と内心思いました。

(とはいえ、信号手前で速度を緩めて、右左を"ちゃんと"見てから進んでたので、後部に乗ってる僕としては一安心でした)

 

 

しばらく走ると「ついたぞ」と声が掛かりました。

 

いわゆる、そこはガード下で

見知った顔が「そこにいるのは仲間だ」というたぐいのことを言いました。

 

行ってみると、穴が開いてクッションが見えている椅子が数脚

元は麻雀の台と思える、ボロボロになった台があり、足を置くには格好の台のように見えました

 

数人の男がたむろっていました。歳は見知った顔と同じぐらいのようでした。

 

僕は何も言わず、相手も何も聞かず

無言のままに、空いていた椅子のうちの一つに座り

 

何も語ることもなく、聞かれることもなく

無言のまま、僕には無音のまま、朝が来るまでそこにいました。

途中でそのまま眠ったので、気がついたら朝でした。 

見知った顔は、気がつくと辺りには居ませんでした。家に帰ったのでしょう。

 

朝が来て、僕は電車に乗り、家に帰りました。

 

きっと、顔合わせ的な意味があったんだろうとは思いました。

 

僕は、ともかく「そういう(夜にガード下に居るような)境遇のやつもいる」と

 

無言の内に言われたような気がしました。

 

 

『理解しろ』

 

今では、そう言われていたのだろうと思っています。