nubird / peperonia’s blog

月のテレポーテーションに小指を引っかける人の物語

無視された警告[編集]

GM北米乗用車・トラック部門担当副社長(旗艦ブランドのシボレー事業部長から昇進。日本風に言えば専務)に48歳でなったジョン・デロリアン(彼が作ったデロリアン・DMC-12は、映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」にも登場している)は財務部門との内部抗争に敗れ退社し、「晴れた日にはGMが見える」(原題:ON A CLEAR DAY YOU CAN SEE GENERAL MOTORS:1979)というインタビュー記録(本人不承認)が出版された。その中で特に強調されているのは外部や内部からの忠告・提言をたとえどんなものであっても拒絶する姿である。

強く印象に残る内容は経営学者ピーター・ドラッカーGMを研究した好意的な著書「会社という概念」(1946年)で書かれた「戦後期には組織・事業・目標を見直す必要がある」という穏健な記述に対して起こったGM内部の憤激である。「GMは世界一なのだから、批判はもってのほか」という理屈である。また最上層部(「十四階」)には自動車産業運営の知識と経験と能力がないとも書いている。

ジャーナリストデビッド・ハルバースタムは『覇者の驕り―自動車・男たちの産業史』(原著、1986年)で、GMをはじめとするビッグスリーが驕り高ぶり、その結果として日本車の攻勢に徐々に破れるも改革を拒む姿勢を描いている。

消費者運動家・ラルフ・ネーダーが『どんなスピードでも自動車は危険だ』(Unsafe at Any Speed)というシボレー・コルヴェアの欠陥を告発した本を出版したときGMから探偵の尾行を付けられ、GMは議会で謝罪する事態になった。あとで分かったのは、この活動は最上層部の承認なしに自動的に行われたということである。GMは批判を色々な手段で抑圧する会社と見られた(ネーダーは極めて禁欲的な人間であり、全く弱みを見つけることはできなかった)。

現在のGMは「それらは昔のGMであり、今のGMとは異なる」という立場をとっている。しかし、2014年に発覚した大規模なリコール隠しにより、税金によって救済されてもゼネラルモーターズの隠蔽体質は変わっていないと批判されている[28]